トピックス・アーカイブ

2020年

2020年11月21日

  
 木須伊織先生が令和2年11月21日に開催された第100回慶應医学会総会にて野村達次賞を受賞し表彰されました。
 野村達次賞は明確な臨床応用を見据えた動物実験医学を展開し、「in vivo実験医学」を長年に亘り牽引されてきた野村達次先生(24期)のご業績を永く讃えるとともに、in vivo実験医学の発展と臨床への活用において、世界に真価を問う斬新な医学研究を行っている研究者に対して贈られる慶應医学会の名誉ある賞です。今回は記念すべき第100回の慶應医学会総会(Web開催)での受賞であり、受賞講演では多くの慶應医学部関係者に傾聴されました。
 受賞研究テーマは、「非ヒト霊長類動物における子宮移植技術の開発:新たな生殖医療技術の臨床応用に向けて」です。木須先生は子宮性不妊女性の挙児を目指して子宮移植という新しい医療技術を発案し、2009年より霊長類であるカニクイザルを用いて10年以上にわたり子宮移植の基礎実験を行ってきました。これまで約100頭のカニクイザルを用いて、霊長類動物のおける子宮自家移植後ならびに子宮同種移植後の出産にそれぞれ世界で初めて成功し、世界の子宮移植研究を飛躍的に前進させました。また、子宮血流動態の解析、低侵襲ドナー手術手技の開発、子宮虚血許容時間や拒絶反応の臨床的特徴の検討など、これまでに多くの基礎的データを蓄積し、世界での子宮移植の臨床応用の展開に多大なる貢献をしてきたといえます。
 そして、現在は我が国における倫理的社会的課題の解決に取り組み、関連学会(日本医学会、日本産科婦人科学会、日本移植学会)や厚生労働省へ働きかけ、日本社会や関連学会への啓発活動、日本子宮移植研究会の設立や慶應病院内の子宮移植ワーキンググループ活動に従事しながら、社会的コンセンサスの形成や臨床応用に向けた体制作りを行い、基礎実験で培ってきた技術や科学的知見を元に国内初の慶應病院での子宮移植の臨床応用の実現を目指しております。
 これらの臨床応用を見据えた長期間に亘る継続的な基礎実験の成果がまさに本賞の受賞者に合致すると高く評価され、今回の受賞に至りました。本研究は日本の将来の学術研究において新たな歴史を刻むことはいうまでもなく、子宮性不妊女性に大きな福音をもたらすことが期待されます。今後も木須先生の我が国における子宮移植の臨床応用へ向けた取り組みが注目されます。 (文責 阪埜浩司)

天谷医学部長より賞状の授与が行われた

第100回慶應医学会総会での受賞講演の様子

2020年6月20日

  
 木須伊織先生が令和2年6月20日に開催された日本産科婦人科学会定時総会にて学術奨励賞を受賞し表彰されました。
  学術奨励賞は日本産科婦人科学会会員の中で最も卓越した研究業績をあげた若手会員に対して授けられる名誉ある賞であり、選考にあたっては、研究の質の高さ、オリジナリティ、内容のインパクト、研究の一貫性、国内で行われた研究、学会への貢献度、など多面的観点から評価され、この度、生殖医学部門より木須先生が選出されました。本来であれば当教室主催の第72回日本産科婦人科学会学術講演会会期中の臨時総会で表彰式が行われる予定でありましたが、コロナ感染拡大の情勢を鑑み、Web開催(令和2年5月23日~28日)となり、改めて定時総会で表彰されました。
  受賞研究テーマは、「非ヒト霊長類動物における子宮移植技術の開発~子宮性不妊症に対する新たな生殖医療技術の臨床応用に向けて~」です。木須先生は霊長類であるカニクイザルを用いて10年以上子宮移植の基礎実験を行っていますが、これまでに非ヒト霊長類動物における安定した子宮同種移植モデルは存在しませんでした。木須先生は3キロの大変体格の小さいカニクイザルにもかかわらず、繊細な手術技術かつ緻密な術後管理により、安定した子宮同種移植モデルを作製し、さらには世界で初めて非ヒト霊長類動物における子宮自家ならびに同種移植後の出産に成功するという偉業を果たし、これらの業績が評価され今回の受賞に至りました。
 近年の生殖補助医療の進歩により、不妊夫婦が生児を得る機会が増えてきたといえますが、子宮や腟を先天的に欠損する女性や最近急増している若年性子宮悪性腫瘍などで子宮摘出を余議なくされる女性は多く存在し、代理懐胎が認められていない本邦においてはこれらの子宮性不妊女性の挙児は不可能であります。木須先生はその解決策として「子宮移植」という新たな生殖補助医療技術及び移植医療技術を2009年に発案し、子宮移植の臨床応用を目指してこれまで基礎研究を継続的に進めてきました。
 子宮移植の臨床応用には倫理的・社会的課題に対する慎重な配慮が求められ、現在、日本医学会の検討委員会にてその議論が進められています。慶應義塾大学病院においても、既に様々な診療科および職種による横断的な子宮移植ワーキンググループが設立され、国内初の臨床応用の準備がすすめられております。 木須先生の研究により、我が国での子宮移植の臨床応用が目下に迫り、子宮性不妊女性に大きな福音をもたらすだけでなく、日本の生殖医療ならびに臓器移植医療における新たな医療技術を生み出し、日本の学術研究の発展に寄与することが多いに期待され、今後も木須先生の我が国における子宮移植の臨床応用へ向けた取り組みに注目したいです。 (文責 阪埜浩司)

日本産科婦人科学会木村理事長より表彰される木須先生

満面の笑みの木須先生

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