トピックス・アーカイブ

2015年

2015年11月28日

 
 アジアでも子宮移植研究が行われ始め、シンガポールはそのうちの一つのグループです。前回は彼らのカニクイザルを用いた子宮移植実験の協力をさせて頂きましたが、今回はSingapore General Hospitalにて、ご献体を用いた子宮移植に必要な手術手技のシミュレーションを行うために、一緒に研究をさせて頂きました。
簡単に説明をさせて頂きますが、新鮮なご遺体を用いた実験は、事前に特殊な技術を用いて血管内に色のついた液体を入れておくことで、実際の手術に大変近い状況で手術を行うことができ、新しい手術方法の開発を実際の患者様に行う前のシミュレーション手術としてよく行われます。
今回は生体ドナーでの子宮移植を想定し、骨盤底での血管剥離、摘出血管などをよく検討した上で手術を2件行いました。シンガポールの先生方と一緒に骨盤底の血管解剖を確認しながら、予定通りの手術を行うことができ、大変意義のある共同研究となりました。
(文責 木須伊織)
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2017年11月3日

  
 2015年11月3日に第4回日本子宮移植研究会学術集会・市民公開講座が学術集会長である慶應大学医学部産婦人科学教室阪埜浩司先生のもと都内で開催されました。今回のテーマは第1部では「子宮移植」、第2部では「ロキタンスキー症候群」でした。
 第1部においては、慶應大学産婦人科学教室/立川病院産婦人科の木須伊織先生よりはじめに子宮移植の現状と日本の取り組みについてのご講演があり、海外や日本での子宮移植の状況や子宮移植の課題についての解説がありました。続いて、日本における若年女性の子宮移植に対する意識調査結果の報告があり、日本社会においても子宮移植が許容される意見が多いと考えられたが、まだ十分に子宮移植が社会に認知されていない問題点を指摘されました。
 第2部の前半においては、最初に横浜市立大学附属総合医療センター婦人科の榊原秀也先生より、ロキタンスキー症候群の診断・治療についてのご講演がありました。ロキタンスキー症候群の病態を解説して頂き、その治療方法だけでなく、榊原先生のチームが行っている造腟術の工夫について、基礎的なデータを含めご紹介頂きました。造腟術を行う産婦人科医を日本では少ないのが現状で、会場ではその問題点に関するご質問や議論が飛び交いました。
 第2部の後半では、ロキタンスキー症候群の当事者団体である「ロキタンスキーの会」より4名の方が、ロキタンスキー症候群の当事者の思いについてご講演がありました。ロキタンスキー症候群の当事者の方が意を決してこのような形で公の場でご講演されるのは初めての企画でありました。4名の方々から、ロキタンスキー症候群と診断された時の当時の状況や心境、これまで抱えてきたご自身の思い、社会へ対する希望などについてお話がありました。ロキタンスキー症候群は社会のみならず産婦人科医にとってもあまり知られていない病態であり、当事者の方がどのような心境にいるのか、どのような境遇に立たされているのかを知るためにも非常に意義深い企画となりました。このような企画を通して、社会や産婦人科医にロキタンスキー症候群が少しずつ認知され、当時者の方が適切な治療やカウンセリングを受けられる医療体制が築かれていくことを期待します。
 当日は医療関係者、一般の方、マスコミ関係者含めて約80名と多くの方々にご参集頂き、無事に盛会に終わりました。また遠方からご参加頂いた方も多数いらっしゃいました。当日会場にお越し頂いた方々、本当にありがとうございました。
(文責:木須伊織)

2015年4月26日

  
 2015年4月26日に国際生殖医学会・日本生殖医学会の合同開催であるIFFS/ JSRM International Meeting 2015が横浜で開催されました。この日は午前中には、スウェーデンで子宮移植を行っているMats Brännström が会場でご講演され、最新の経過報告や今後の計画などについて述べられ、我々チーム一同にとっても大変意義のある講演でした。
 午後には子宮移植に関するシンポジウム「子宮移植の臨床的展開と課題」が開催されました。我々の研究メンバーが主体となって行われ、子宮移植に対して各立場からの視点で講演がなされました。はじめに、菅沼信彦座長が子宮移植のoverviewとして、日本や海外の現況についてお話がありました。続いて、木須伊織先生が産婦人科の視点からの多くの課題について、水戸医療センターの湯沢賢治先生からは臓器移植医の視点からの課題についての発表がありました。さらに医師からの立場だけでなく、患者の立場からNPO法人Fineの松本亜樹子様からロキタンスキー症候群の方々からの子宮移植に対するアンケート調査結果、続いて林文子さんから一般市民に対して行ったアンケート調査結果についてのご講演がありました。最後にClosing Remarksとして三原誠先生から子宮移植の臨床試験実施に向けての課題についてのまとめがありました。その後に行われた総合討論では会場から様々なご意見ご質問を多く頂き、活発な議論がなされ、2時間半にわたるシンポジウムがあっという間に過ぎてしまいました。会場には多くの医療関係者、マスコミ関係者、一般の方々にご参集頂き、無事に盛会に終わりました。
  

2015年1月9日

  
 2015年1月9日にSingapore General Hospital(SGH)の動物センターにてシンガポールの子宮移植研究チームとカニクイザルの子宮同種移植手術を行いました。
 シンガポールでは日本同様に代理懐胎は認めておらず、最近、子宮性不妊女性に対する子宮移植の研究を行うチームが結成されました。形成外科医および婦人科医から構成される彼等のチームも我々同様に基礎実験としてカニクイザルを使用しており、これまでに自家移植実験を1件行っております。今回は、同種移植手術を予定し、カニクイザルでの同種移植手術の経験がある我々のチームに手術の協力依頼がありました。残念ながら、三原先生は臨床業務の都合がつかず参加できず、木須のみが参加させて頂きました。
 SGHの動物センターは大変近代的な大きな建物で、手術室は人の手術室と同等の環境で、部屋も非常に大きく、同じ部屋でドナー、レシピエントの手術を同時並行することができました。獣医はドナー、レシピエントに1名ずつ担当してくれました。木須がSGHの形成外科医とドナー手術を担当し、形成外科医が血管吻合を行い、婦人科医と木須で残りのレシピエント手術(腟吻合や子宮固定)を担当しました。SGHの形成外科医のmicrosurgeyの技術は大変素晴らしく、顕微鏡下での微小血管吻合に苦労することなく、スムーズに吻合を行っておりました。
 この日は医師、獣医、センター専門職含め計12名がこの実験に参加し、木須にとっても大変有意義な海外での移植実験となりました。今後、シンガポールでも子宮移植研究が発展していくことを願っております。
(文責:木須伊織)
  

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