研究内容

その他の活動

CAL(Clinical Anatomy Laboratory)

 ヒトでの臨床応用を行う前には、動物実験だけでなく、ヒトを想定した十分な子宮移植の手術シミュレーションが求められます。そのため、私達は慶應大学医学部内のCAL (Clinical Anatomy Laboratory)という施設で、ご本人のご意志、ご家族のご協力によりご提供頂いたご献体で手術手技の習得を含めた臨床解剖を行っております。骨盤内の十分な臨床解剖学的知識に基づく、高度で安全性を確保するような手術手技を開発できるように研究を行っております。

  
2014年9月22日
場所 慶應義塾大学医学部CAL
実験者及び協力者 木須、梅根、野上
内容 子宮移植シミュレーションによる子宮移植手術手技の開発
コメント ご献体(fresh cadaver)を用いて、子宮移植を想定した手術手技の習得を含めた臨床解剖を行いました。ドナー及びレシピエントの安全性をできる限り確保し、より低侵襲の手術手技の開発を目指して、子宮移植のシミュレーションや血管走行の確認を主な目的として実習を行いました。特に血管吻合のシミュレーションを行うことができ、大変有意義な実習となりました。献体してくださった献体者ご本人様のご意思とそのご意思に同意してくださったご遺族に感謝し、この経験を臨床に生かせるように努めたいと思います。
  
2014年11月15日
場所 慶應義塾大学医学部CAL
実験者及び協力者 仲村、木須、羽田
内容 子宮移植に必要な骨盤内臨床解剖の習得
コメント ホルマリン固定遺体を用いて、子宮移植手術に必要とされる骨盤内解剖学の理解を深めるために臨床解剖を行いました。今回は特に内腸骨血管系の走行に注目し、ドナーの血管柄付き子宮摘出のイメージをつかむことができました。さらには、神経系の走行(大腿陰部神経、閉鎖神経、腰仙骨神経幹-坐骨神経、下腹神経、骨盤神経叢、仙骨神経S1~S3)、骨盤底筋群(内閉鎖筋、肛門挙筋群、尾骨筋、梨状筋)、梨状筋上下孔とその孔を通る血管神経の走行などの解剖も習得しました。安全な手術を行うためにはこれらの解剖を十分理解する必要があると考えられました。
  
2022年2月7日、9日、11日
場所 慶應義塾大学医学部CAL
実験者及び協力者 木須、白石ほか 計10名(見学者含む)
内容 腹腔鏡下子宮移植ドナー手術、骨盤内臨床解剖の習得
コメント ご献体(Thiel固定法)を用いて、子宮移植の手術手技の習得のため、ドナー手術を腹腔鏡下に行いました。ドナー手術においては腹腔鏡を用いることで骨盤底の血管や神経走行を拡大視しやすく、さらにはドナーの低侵襲につながる手術手技であると感じました。また、骨盤底の解剖の知識を深めるため、神経系の走行(閉鎖神経、腰仙骨神経幹-坐骨神経、下腹神経、下下腹神経叢、骨盤内臓神経、仙骨神経S1~S4)、骨盤底筋群(内閉鎖筋、肛門挙筋群、尾骨筋、梨状筋など)、梨状筋上下孔とその孔を通る血管神経の走行や靱帯などの解剖も習得しました。安全な手術を行うためにはこれらの解剖を十分理解する必要があると考えられました。

海外研究者への研究協力

 私達の基礎研究は国際的にも非常に評価されており、海外研究者からの基礎実験の立ち上げや手術指導の協力のご依頼を頂くことも多いです。私達の子宮移植の技術を海外研究者にも伝承し、また海外研究者に協力することで国際的にも子宮移植研究を発展させていくことを目指しております。

2015年1月 シンガポールにてカニクイザルを用いた子宮同種移植実験の手術指導を行う木須医師

2015年11月 シンガポールにて献体を用いた子宮移植手術シミュレーションの指導を行う木須医師

2018年7月 私達のカニクイザルを用いた子宮移植研究を見学しにきた韓国(左)と中国(右)の研究者

海外での子宮移植手術ならびに術後管理の見学

 私達のチームは国際的に最も子宮移植研究をリードし、ヒトでの子宮移植を最も行っているスウェーデンに足を運び、実際にヒトでの子宮移植手術(計2件)の見学ならびに免疫抑制剤を含めた術後管理の見学を行っており、スウェーデンチームと同等以上の手術技術の提供や術後管理が行えるように準備をしております。

  • スウェーデン Sahlgrenska大学病院にて
  • スウェーデンチームの産婦人科医と移植外科医

術後の回診ならびに術後管理を見学

海外研究者との交流ならびに情報収集

 基礎研究では世界をリードしてきた私達ですが、海外ではすでに多くの国で子宮移植の臨床応用が行われております。海外での子宮移植の動向や明るみに出てきた課題もあり、常に海外の子宮移植の現状を把握していく必要がありますので、私達は海外で開催される子宮移植に関する学会や会議にはすべて出席しております。また木須医師は国際子宮移植学会の設立理事でもあり、海外の研究者とコミュニケーションを常に取っており、海外の最新の情報の把握に努めております。

  • 第1回国際子宮移植学会に参加
  • 木須医師が初めて開催された国際子宮移植学会の最初の講演を担う
  • スウェーデンのマッツ教授と
  • アメリカクリーブランドのツザキス教授と

生殖補助医療に関するプロジェクトチーム(自民党)の会議参加

 我が国には生殖補助医療に関する法律が存在せず、その法制化が待ち望まれています。現在、自由民主党の生殖補助医療に関するプロジェクトチーム(座長 古川俊治先生)が発足し、第三者を介する生殖補助医療に関する法律骨子素案が作成されております。それには精子/卵子提供や代理懐胎のみならず、子宮衣装を新たな生殖補助医療として組み込まれることも検討されており、私達もその会議に陪席き、子宮移植に関する議論を政治家と行っております。

自民党本部内で開催された会議にて子宮移植の解説をする阪埜医師